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新島放浪記 その⑤

   

9/1(土) 晩の物語


釣りを終えると、既に日は完全に落ち、辺りは常夜灯が淡く光るほどとなっていた。
釣りの最中は、まだ暗くなりきってはいないという自己暗示によって錯覚してしまいがちだが、とうに夜へと移っていたようだ。
悠久の時を感じた、などと言ったが、所詮それは瞬間的な感覚に過ぎなかった。


タックルを整理し、我々は晩飯を漁りに動き出す。
何度も往復した前原海岸通りを戻り、本村の繁華街へ向かった。

この頃、おそらく午後8時前くらいだったか。

街では、観光客が食後のビールを買いに出たり、食事を求めて彷徨ったりしている。
いや、よく見ると地元の方々も多く見受けられる。
流石に土曜の夜ともなると盛んなものだな。

昼間の街なか周遊の際、居酒屋や食事処の位置は押さえてある。
正直言って、空いていればどこでもいい。

ラーメン屋の前を通過。
昼がラーメンだったので入るつもりは無いが、かなり込み入っているようだ。

続いて居酒屋。
入り口の貼り紙に気がつく。

「本日貸し切り」

そう来たか。
なら次へ行くまでだ。
まだまだ店はあった。

ところが、不測の事態発生。
信じられなかった。
こんなことがあろうとは。



「本日貸し切り」「本日貸し切り」「本日貸し切り」
「本日貸し切り」「本日貸し切り」「本日貸し切り」



どこの店も貸し切りの貼り紙。
一周して戻って来たラーメン屋も、よく見てみると同じ貼り紙が貼ってあった。

やられた。
これは嵌められたと言ってもいい。

どの店も店内は地元の人で溢れていた。
観光客を追い出したいのだろうか、この島は。
気が狂いそうだ。
何も食わず、屋根も無く、雨の中を1日過ごせと言うのか。

あの伝説の島時代にこの愚行をかましていたら、きっと観光客による暴動が起きたに違いない。

茫然と立ち尽くす。
オワタ。
全てオワタ。
アタマンナカマッシロ。




もはや何も無いのがわかっていても、かすかな希望を抱き、街なかを外れた辺りをしばらく走り回った。
疲れ果て、乳酸と雨と絶望に満ちた身体で漕ぐペダルの重さと言ったらない。

いい加減、省エネモードに切り替えようと、チャリのスピードを遅める。
これ以上腹を空かしてはならない。
絶対にあってはならないのだ。
そして事態を冷静に受け入れ、朝まで自販機のルービーでやり過ごす決意を固める。

その瞬間、まさかの起死回生が訪れた。

全てを受け入れた冷静さが思い出させてくれた。
ワタシの背負うリュックに、行きのフェリー用に買った魚肉ソーセージ1本とミックスナッツがあったことを。



生き残ったのだ。
サバイブ達成。
これで一晩は保つ。

OKA氏には黙っておこうかとも考えたが、倒れられても困るので教えてやった。
彼も当然喜んでくれた。
嗚呼、これで宝を山分けせねばならんな(笑)


落ち着きを取り戻したわれわれの頭脳は、孔明の如く切れた。
お土産屋だ。
まだやっていたはず。

再び街なかへ戻り、お土産屋を襲撃。
イカ軟骨とタコ煎餅を手に取り、金銭との交換を要求。
ほんの数秒のやりとりの後、快諾を頂戴する。



その足で自販機を目指す。
すると、まさかの先行者。
男1人女2人という、伝説の島時代を彷彿とさせる、なんとも羨ましい構成。

そのショボイ男は、雨の中を大荷物で待ち続けるわれわれに何の心配りも無く、
「金がどーの」だのなんだのと抜かしながらゆっくりとビールを買い続ける。

脇に立つポンコツ女2人も、当然われわれに気付いたまま無視を敢行。
その愚鈍な男のスローな購入風景を楽しそうに見つめている。


なんなんだこれは。
イカ軟骨やるから持ってるルービー全部よこせと言ってやろうか。

近隣コミュニティー(近所付き合い)を持たずに生きて来た人間、ようは「都会人(商店街、下町系を除く)」に多く見られる人種だ。
事実、東京ではこんなことだらけ。
まさか新島でも喰らうことになろうとは。


大人しく待ち続けること数分、自販機が空いた瞬間、電光石火の勢いでありったけの硬貨をブチ込んではボタンを連打して行く。
残念ながらワタシは諭吉しか持ち合わせていなかったため、OKA氏の英世と硬貨に全てを託した。

ようやく手に入れた。
命懸けで手に入れた10本強のルービー。
500ml缶も贅沢に数本混じっている。
イケル。
これでサバイブしてやる。




そして、今晩の寝床へ向かい、意気揚々とチャリを走らせる。
一発目のイカ軟骨にどうかぶりついてやろうかという妄想だけでキマってしまいそうだ。

寝床の目星は昼のうちに付けてあった。
キーワードは屋根。
今も雨は降っているが、今夜はかなり降るとの予報だった。
出来れば静かで迷惑にならない場所が好ましい。

マルチ経営タクシーのおっちゃんが、悪質でなければ一晩くらいその辺にテント張っても怒られないよ、とは聞いていた。

そこで、街なかからは大分離れるが、屋根のあるベンチ周りに慎ましく張らせて頂くことにした。



到着。
お世話になります。

屋根の下は当然ながら雨も当たらない。
天国は地獄の中にこそあるのだな、と無駄に感じてしまった。

まずは軽く乾杯。
互いに生き延びたことを祝い合う。

イカ軟骨を喰らう。
硬い。
アゴが疲れる。
疲れ切った身体には向かない代物だ。

タコ煎餅はというと、サクサクと実に軽快な咀嚼を可能とし、苦しかった旅路を忘れさせてくれる。
やはり、タコ煎餅とイワシ煎餅のコンビにするべきだった。


ルービーを2、3本やっつけたところで、テントの設営に取り掛かる。
2人共テント泊など初だったが、どうにかこうにか、誤摩化し誤摩化し組み上げる。



新島放浪記 その⑤
漆黒の闇夜に浮かぶテントと30代独身男性。
上機嫌で記念撮影をしているご様子。



これで、本日残る仕事は、クーラーのルービーを飲み干すことだけとなった。



新島放浪記 その⑤
テント内でその任務を必死に遂行する、の図。
最後にルービーを買う硬貨が足りなくなったため、仕方無く買った発泡酒を手にしている。



雨も強まっている。
そろそろ消灯しよう。

寝る前に外の後片付けをせねばならん。
来た時よりも美しくをモットーに、元からあったゴミも回収してやる。

そして、われわれはテントに納まった。
無論、フェリーには敵わないとは言え、それでも程々に心地よい。
硬い地面が力強く背中を突き刺したが、そんなことすらもうどうでも良い程だ。
サバイブした安心感とアルコールの酔いから、われわれはすぐに寝息を立て始めた。
イカ軟骨でキマってしまっただけかどうかは、もはや神のみぞ知る。
それでは、おやすみなさい。





次回、ようやく島2日目突入!
9月中には書き終えよう!



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この記事へのコメント
「イカ軟骨とタコ煎餅を手に取り、金銭との交換を要求。」
…要は買ったんだろ?(笑。
しかし「本日貸し切り」は半端ないな。
鎖国の名残を感じた。我が地元は開いた方だが…。
nopita
2012年09月26日 02:57
nopiさん>
コメありがとう。
かつての隆盛を極めた○○○アイランド時代からの落差を受け入れられず、排他的なひがみ精神が生まれたのではなかろうか。
tomocat
2012年09月26日 09:39
 
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新島放浪記 その⑤
    コメント(2)